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BtoB営業戦略の基盤に~カスタマージャーニーマップの作り方とテンプレート

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ジャーニーマップ

BtoCのみならずBtoB領域でも、顧客の購買行動の変化に適合しようとデジタルマーケティング、コンテンツマーケティングが拡がり、その基盤となる「カスタマージャーニーマップ」の重要性も増しています。

顧客自身のニーズへの「気づき」から最終的な購買の意思決定、さらにはその先での優良顧客化までの道筋を、顧客の「購買行動」として把握・確認し、都度毎の顧客との接点(タッチポイント)を明らかにする。そしてそれぞれの接点での顧客への働きかけ(=施策)を検討し、総体としてBtoB営業戦略を構築する。。。
そのためにまずは顧客の購買行動を可視化し、社内や部門で共有・議論し、全体像を正しく理解しなければなりません。この際に「カスタマージャーニーマップ」が有用でかつ強力なツールになります。言い換えればカスタマージャーニーマップがBtoB営業戦略策定の基盤となるのです。

考え方自体はそれほど難しいものではないカスタマージャーニーマップですが、実際に作るにはいくつかのポイントがあります。さらに、実際に営業戦略の策定や見直しに活かせるものとするためには、そのための準備や工夫も必要です。

本記事ではカスタマージャーニーマップの目的と作り方のポイントを再確認した上で、営業戦略策定への活かし方についてまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
末尾には広い業種でお使いいただけるようにシンプルですが汎用性の高いテンプレートも用意しています。

目次
1. BtoB営業戦略策定におけるカスタマージャーニーマップの重要性
 1-1. 変化する顧客の購買行動の可視化
 1-2. マップを起点とした施策の検討
 1-3. 施策案からの営業戦略構築と社内共有
2. カスタマージャーニーマップの作り方
 2-1. 準備
  2-1-1. 必要性を共有する
  2-1-2. 進め方を決める
  2-1-3. 対象範囲(商品・サービス)を決める
 2-2. カスタマージャーニーマップを作る
  2-2-1. 顧客像「ペルソナ」を設定する
  2-2-2. ペルソナの購買行動を想定し、顧客接点を明らかにする
  2-2-3. 接点ごとでの顧客の思考を想定する
  2-2-4. 自社の実施している施策を書き加える
3. マップを基盤に営業戦略を構築する
 3-1. 競合の施策を入手し、比較する
 3-2. 顧客接点での理想のサービスを考える
 3-3. 施策の強弱/取捨選択/時間設定による戦略としての構築
4. まとめ
APPENDIX:無料 テンプレート

1. BtoB営業戦略策定におけるカスタマージャーニーマップの重要性

カスタマージャーニーマップを作ること自体は、それほど難しいことではありません。しかし、マップを作るのはゴールではなくスタートです。目的、重要性、ポイントを確認してから取り組みましょう。

1-1. 変化する顧客の購買行動の可視化

インターネットの普及とアマゾンやグーグル、フェイスブック、ラインなどに見る様々なオンラインサービス・SNSの普及は、消費者の個人としての購買行動だけでなく、企業としての購買行動さえも変化させつつあります。「系列」や「出入り業者」を通じてのカタログや営業マンからの購買から、ネットでの情報収集と比較検討による購買へ、といった具合です。

顧客側の購買行動が変化することで、従来の商慣習に阻まれていた新たな顧客へアプローチのチャンスが生まれると同時に、自社の営業手法が顧客のこの新たな購買行動にマッチしていなければ、販売の機会や顧客そのものを失うことになります。

自社の顧客を失わず、さらには新たなチャンスを取り入れるために、まずは自社の商品やサービスを利用する顧客の購買行動がどうなっているかを確認する「可視化」がとても重要なのです。

1-2. マップを起点とした施策の検討

カスタマージャーニーマップができたら、そこで明らかになる、「顧客接点」(タッチポイント)での施策を検討します。施策検討は以下の項目をカバーしながら行います。

・顧客接点における施策検討の項目

  1. 現在自社が取っている施策
  2. 競合企業が取っている施策
  3. 理想的な施策案(予算や時間軸、人的制約等を考え無いもの)
  4. 施策案に必要な予算、時間軸、人的資源等
  5. 最終的に自社が取るべき施策と、その総体としての営業戦略※ 
         (※一般に「マーケティング」と呼ばれる領域も含みます。)

1-3. 施策案からの営業戦略構築と社内共有

カスタマージャーニーマップをもとに理想の施策を検討したら、実際の予算や人的資源、時間軸を見ながら実行施策を決めていきます。競合がまだ取り組めていない施策や自社が有意性を持つ施策が強調できれば、それがそのまま営業戦略となります。

ここで取捨選択した施策とその全体からなる営業戦略は、カスタマージャーニーマップによって、自社がどのように顧客を獲得していこうとしているのかの明確で分かりやすい社内説明資料にもなるのです。

2. カスタマージャーニーマップの作り方

実際にカスタマージャーニーマップを作るにあたっては、もし初めてであれば、以下に述べる基本的な流れに沿って作成することをお勧めします。もし既に作成済みだけれど見直してより踏み込んだものにしたいということであれば、第5項を見てください。

2-1. 準備

次項で述べますが、カスタマージャーニーマップを作る作業には大きく二つの進め方があります。一つには担当者が素案を作って関係者で議論する方法と、もう一つにはワークショップ形式で進める方法です。
どちらが正解ということではなく、企業文化や許されるタイムラインなどに拠りますので、自社に相応しい方法を選んでください。

2-1-1. 必要性を共有する

トップダウンで作る場合もボトムアップで取り組む場合も、関係者がカスタマージャーニーマップの必要性を理解しているとスムーズに進みます。第1章で確認したカスタマージャーニーマップの目的と本章で見ていく準備、進め方を共有して、必要性への理解を共有し、顧客の購買行動の確認や施策案の検討、営業戦略構築からさらにはその実行までに必要な協力を取り付けましょう。

2-1-2. 進め方を決める

施策検討の進め方は、組織文化や在り方によって様々ですが、基本的には主担当者或いは主管部所で素案を作った上で関係者で議論し修正する進め方と、ワークショップ或いはプロジェクトの形式をとって最初から議論しながら構築する進め方がありますので、自社の状況によって決めてください。

2-1-3. 対象範囲(商品・サービス)を決める

顧客の購買行動は社会事象とも言えるほど広範囲な変化の為、本来的には自社の全ての商品・サービス全般に対してのカスタマージャーニーマップの作成と戦略の再構築が必要です。

提供している商品やサービスのカテゴリーが限定されていて顧客層も限られていれば、全社で1枚のマップで済むということもありますが、それぞれ顧客層が異なる複数の商品やサービスを展開している場合には、原則的にはそれぞれのカスタマージャーニーマップが必要です。

一度に取り組むのが難しい場合には、プライオリティをつけて順に作ったり、担当部署を分けるなどして取り組みましょう。

2-2. カスタマージャーニーマップを作る

対象となる商品・サービスの範囲がきまったら、いよいよカスタマージャーニーマップ作りに取り掛かります。

2-2-1. 顧客像「ペルソナ」を設定する

まずは対象となる商品・サービスの顧客像である「ペルソナ」を決めていきます。具体的には以下の様に進めます。

・ペルソナの設定

  1. 実際の商品・サービスの顧客のキーマンを複数挙げる 
    例:A社A’部A’’課長40歳女性、B社B’部B”主任30代男性、C社C’部C”部長50 代男性、など
  2. ターゲットとすべきキーマン像(ペルソナ)を決める
    例:中堅商社資材部課長Dさん、40代男性、、、など。

ペルソナの設定は具体的であればあるほど良い、との考え方があり、所属企業の詳細から個人の学歴や家族構成、住所、趣味などまでを詳細に想定することもありますが、少なくとも年代の差で情報源が異なるか(紙媒体/インターネット/携帯など)や業界慣行の強い業種か否か等、購買行動に特に影響の大きい点を適切に想定する事が重要です。

2-2-2. ペルソナの購買行動を想定し、顧客接点を明らかにする

ペルソナが定まったら、ペルソナの購買行動を想定します。ある程度は推定だけでも可能ですが、①日頃から顧客と接している社内の営業マンから情報を集めたり、②問合せ客等から得られる自社へのアプローチの経緯などを集約しておく、③親密な顧客にインタビューの協力をお願いする、などでより精度を高めることができます。

また購買行動の把握は時系列的にAIDMA(アイドマ:マーケティング用語で顧客の購買行動の時系列の流れ:Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動))を想定したペルソナの購買行動がカスタマージャーニーマップの根幹です。

そしてペルソナの購買行動の中から、自社が接点(タッチポイント)を持てる可能性のある部分を抽出します。現在自社では接触を持っていない接点も、今後の選択肢として可能な限り抽出します。

2-2-3. 接点ごとでの顧客の思考を想定する

BtoCでのマップではしばしば「感情の変化」などとして笑顔や泣き顔のマークで顧客の関心や不安をあらわしていますが、BtoBではその接点でどんな情報を取ろうとしているかがポイントなります。商品やサービスの基本的な用途や効用、選択肢・競合商品、仕様とそのバリエーション、価格、提供企業、評判・評価など、何を調べて、どう判断しているのかを推測します。それぞれのポイントで購買意欲が高まる顧客と、低下もしくは離脱してしまう客のそれぞれの理由は何かを想定し、確認します。

2-2-4. 自社の実施している施策を書き加える

最後に、それぞれの接点で自社が提供している情報や取っているアクションを書き加えます。

これで一般に言われるカスタマージャーニーマップの作成はおしまいです。お疲れ様でした。。。とはなりません。

カスタマージャーニーマップを作ればそれで終わりではありません、第1章の冒頭に書いた様に、カスタマージャーニーマップの作製はあくまで営業戦略策定のスタートに過ぎないからです。

ジャーニーマップ

 

3. マップを基盤に営業戦略を構築する

カスタマージャーニーマップでは顧客の購買行動と、各接点での顧客の思考を確認し、そのうえで現在自社が行っている行動(マーケティング施策、営業施策)を確認しました。

ここから営業戦略を構築していくためには以下の3つのステップを踏みます。

3-1. 競合の施策を入手し、比較する

まず競合他社が同じような商品・サービスを提供しながら、どの顧客接点で、どのように対応しているかの情報を集めて吟味します。BtoC企業では実際に競合の顧客接点に出向いたり、調査会社に覆面調査を依頼することもあります。BtoB企業では協力してもらえる顧客へのインタビューの中で、競合のアプローチ手法、セールスポイントなどを教えてもらう方法があります。

3-2. 顧客接点での理想のサービスを考える

次にそれぞれの顧客接点において、予算や自社のノウハウの有無などの制約にとらわれずに、理想のサービス、接触を考えます。過剰である必要はなく、顧客のニーズを真に満たす情報提供、顧客の負担がない形、気付きや将来に向けた示唆など、どのような価値がどのような形で提供できるとベストかを考えます。

3-3. 施策の強弱/取捨選択/時間設定による戦略としての構築

最後に、前項で挙げた理想のサービスをもとに、予算的制約、人的制約やノウハウの制約、時間軸などを考慮しつつ、その中で競合優位を意識した施策の最適化を行います。

限られたリソースを配分し、施策を取捨選択して取りうる最大限の効果を期待する施策の総体が自社の営業戦略となります。議論を通じて、或いは結果の説明だけでも、顧客理解と自社の戦略の共有が可能になりますので、様々な場面で活用しつつ、PDCAサイクルや事業計画作成などを通じてアップデートすることで、より有効なものとすることができます。

ジャーニーマップからの戦略

4. まとめ

顧客理解に非常に有効なツールであるカスタマージャーニーマップですが、多くの場面で「作って終わり」「施策の確認で終わり」になっているようです。
たった一枚の紙であらわされることの多い、行ってみればシンプルなツールですが、戦略構築の基盤になるものだと捉えることで、その重要性についての見方が変わるのではないでしょうか。

この機会にぜひその本当の価値を確認して、顧客の購買行動にマッチした強力な営業戦略を構築してください。

APPENDIX. テンプレート

カスタマージャーニーマップ_template

 

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